上まぶたの眼瞼内反症(がんけんないはんしょう:逆さまつげの一種)は目の表面をまつ毛が目を攻撃します。痛いです!
まずは写真をご覧ください。左上まぶたの内反症です。まつ毛が目の表面に向けてニョキニョキ伸びています。
まつ毛の硬い先端が目の表面(角膜)をツンツンつついて傷をつけてしまいます。
上まぶたの眼瞼内反症(entropion)
眼瞼内反症は逆さまつげの一種で、まぶたのトラブルです。本来外向きに伸びるはずのまつ毛が内向きに伸びて目の表面を刺激します。
逆さまつげって何?
逆さまつげには
- 睫毛内反(しょうもうないはん)
- 睫毛乱生(しょうもうらんせい)
- 眼瞼内反(がんけんないはん)
があります。
睫毛内反
まぶたの位置に異常はないが、まつ毛だけ内向きに伸び、まつ毛が目の表面を刺激するものです。生まれつきの異常であることが多いです。頭髪のつむじのように、まつ毛の生えて伸びる方向が毛根レベルから違う状態です。
「逆さまつげを治療してふたえにしてきた」
と言ったら、大抵この治療です。
睫毛乱生
わずか数本のまつ毛の伸びる方向が異常です。協調性のない奴がいるんです。
眼瞼内反
眼瞼内反は、板状のまぶた自体が内向きにくるりとひっくり返ってまくれ込んでしまいます。まつ毛だけでなく、皮膚自体も目の表面を刺激します。
内反・外反を口で例えると、
内反は、酸っぱいものを食べて唇をがキューっとすぼめたり、総入れ歯を外したおじいさんのくちびるが吸い込まれてミッフィーの口みたいになるカタチ。
外反(がいはん)は、チューしようと唇を突き出すカタチ。
眼瞼内反症は上下のまぶたに起こります。下まぶたが多く、上まぶたは少ないです。
ネットの世界でも上まぶたの治療に関する情報は少ないのです。今回は上まぶたにフォーカスして紹介しておきます。
治療の適応(治療の対象になる条件)
まつげが目の表面に当たっている結果、
- 目の違和感(ゴロゴロ、ショボショボ)がある
- 視野にちらつきがある
- 目の表面が傷ついている
場合は、治療が必要ですよ。
治療方法と欠点
いくつか選択肢があります。医師と相談しましょう。
- まつ毛の抜去:うまく抜けないと途中で切れて余計に刺激が強くなる。すぐにまた生えてくる
- 二重を作るメーク:テープや糊など。皮膚の過敏性などに注意。
- 手術:傷になること。ダウンタイムがあること。
どこの診療科を受診する?
眼科で目の表面の具合を見てもらいましょう。
治療は眼科か形成外科です。
手術の方法は?
眼瞼内反症手術は縫合糸を埋没させて矯正する方法と、皮膚を切開して筋肉やスジを調整する方法があります。
上下で治療方法には違いがあります。上まぶたは二重にできるので切開部位をくぼませても問題ないのです。そういう意味では上まぶたの方が治療の自由度がありますね。
切開部位は二重の谷間になる場所です。まぶたのたるみ(眼瞼下垂症)手術を同じです。
挙筋腱膜(まぶたを持ち上げる筋肉)をまぶたの切開した場所に固定するとまぶたが外向きに回転し、内反が治るのです。
手術のダウンタイムはある?
残念ながらダウンタイムがあります。腫れと内出血です。腫れは1〜2週間程度。内出血は個人差がありますが、0日〜4週間です。
手術の時の麻酔は?
局所麻酔(局部麻酔)です。歯科で注射をしたことがありますか?それと同じで、切開する場所に細〜い針(予防注射の針よりも細いですよ)で注射します。すぐに感覚が痺れてきます。麻酔が切れるのは注射後1時間くらいです。
手術のあとの痛みは?
ほとんどありません。念のため消炎鎮痛薬を持ち帰り、痛みのあるときに内服するようにします。ほとんどの人は飲まずに終わっています。
手術のあとの洗顔は?
翌日の夕方からOKです。
手術の困ったこと=左右の違い
手術のコンセプト自体は合理的です。しかし、
もともと挙筋腱膜の緩みによるまぶたのたるみ(眼瞼下垂症)があると、眼瞼下垂症自体も修復されてしまうので、反対側(無治療の方)と比べてまぶたの開きが大きくなってしまいます。元来ひとえまぶたの人も左右の違いが大きくなってしまいます。
見た目で困る場合は反対側も治療を考えましょう。
さて、冒頭のモデル症例の経過です
「左上まぶたの内反」で目の表面がまつ毛に狙われていましたね。( ; ; )
それだけでなく、皮膚自体も目の表面に触れています。皮膚自体も目の表面に刺激になります。重症です!
皮膚がたるんでいるのでまぶたの縁にかぶさっています。指で持ち上げてあげると逆さまつげが顔を出してきます。

入ってます!まつげと皮膚が…これは痛い!でも、治療後には改善されましたね。 😛
眼瞼内反の治療はどのようにしたのでしょうか?
眼瞼内反の原因として、
- 挙筋腱膜の緩み
- 眼輪筋の緊張が強いこと
- ミュラー筋の力が強いこと
- 皮膚のたるみが多いこと
が考えられます。おもに加齢が後押しします。
手術では挙筋腱膜の修復、眼輪筋の処理、皮膚のたるみ取りをしました。
重瞼部分(ふたえの谷間になって畳まれて引き込まれる場所)で切開し、ここに挙筋腱膜を連結しました。目を開けようとすると眼瞼挙筋が収縮し、重瞼部分からまぶたが持ち上がります。まぶたが外反する方向に持ち上げられ、まつげが外向きになるのが写真でもよく分かりますね。
問題は左右差
挙筋腱膜を修復したため、左の眼瞼下垂も治ってしまい、右との差が強く出てしまいました。

あらかじめ予想されたことです。
気になるようなら右も治療を検討することでご本人も納得済みでした。
「今のところはこのままで良いです!」
とのことです。

へリングの法則とは、まぶたのたるみ(眼瞼下垂)治療後に反対側のまぶたが下がる現象です。(関連記事:へリングの法則を予見する)
まぶた治療の啓発活動目的に写真を使用することに同意いただきました。ご協力ありがとうございます。(埼玉県の患者さん)
若い人の睫毛内反の記事
上まぶたの逆さまつげ(睫毛内反)子供のころからの悩みです😢上まぶたの皮膚がまつげの上に覆いかぶさってしまいます。いわゆる「ひとえまぶた」におこる現象です。まつげが目の表面にあたり、目の表面を傷つけます。症状は[…]
あとがき
まつ毛が目に入ると違和感がたまらないですよね。
わたしは逆さまつげはありませんが、抜けたまつ毛がよく目に入ります。ショボショボしますよね。
「あ、異物だ!」
と身体が反応してくれるのですね。やっぱり目は大事です。
かれこれ20年くらい前でしょうか。新潟の花火を見物に繰り出しました。打ち上げ場所に近く、破片(ボール紙みたい)が近くに落下してくるくらいです。ドッカンという音が自分のカラダをドスンと震わせます。
迫力満点で興奮しました。
が、
目の違和感がやってきました…いや!違和感をはるかに超えたツーンとくる痛みです。
😭
帰宅後に悪戦苦闘の上に取り出したのは、0.3ミリ程度の砂つぶ一個…
でも、これを放置したら大変なことになっていたかもしれません。
身体が教えてくれたのでした。。。